《サンクチュアリ》D-Day

「――本当に……今日、やるのか?」 「そうですよ。だって、あなたはカロンでしょう? 名前は、ですけど」 「死神じゃないか……カロンは、コードネームだ。――――名前は……ダート」 「――ダート……そう、ダートさん」  腹の...

《サンクチュアリ》D-1

 昨日、あのあと何を聞いてもはぐらかされてしまい、よくわからないままだった。死ぬことと殺されることは、どう違うのか。なぜ自分なんかを救世主と呼んだのか。救世主? ――ありえない。  コンクリートの天井のシミを見つめながら...

《サンクチュアリ》D-2

 日当たりのいい窓際に置かれたソファで眠る彼女は、日向ぼっこをする黒猫のようだ。  自分も怠惰な生活をしていると思うが、睡眠に関しては彼女のほうが貪欲かもしれない。――そろそろ起きるころだろうか。  コーヒーを淹れている...

《サンクチュアリ》D-3

 昨日も結局、どんなふうに殺してほしいとか、予算はいくらでとか、一方的に挙げられる要望を聞いているだけになってしまった。  相手にせず追い出してしまえばいいのに。それとも、本人が望んでいるのだからさっさと殺してしまえばい...

《サンクチュアリ》D-4

 あまり眠れなかった。  ベッドに横になったまま、昨日のことを思い出す。  仕事中も気になって集中できなかった。だからといってヘマはしなかったが、帰るのが予定より遅くなってしまった。  帰ったときには彼女はすでに眠ってし...

《サンクチュアリ》D-5

 真っ黒なロングヘア、真っ黒な瞳の彼女は、気ままな黒猫のように勝手に棲みついた。  昼過ぎに朝食をとりながら、彼女の視線に気づかないふりをする。 「カロンさん。今日はお仕事ですか?」  とうとう話しかけてきた。  名乗っ...