《サンクチュアリ》D-Day
「――本当に……今日、やるのか?」 「そうですよ。だって、あなたはカロンでしょう? 名前は、ですけど」 「死神じゃないか……カロンは、コードネームだ。――――名前は……ダート」 「――ダート……そう、ダートさん」 腹の...
「――本当に……今日、やるのか?」 「そうですよ。だって、あなたはカロンでしょう? 名前は、ですけど」 「死神じゃないか……カロンは、コードネームだ。――――名前は……ダート」 「――ダート……そう、ダートさん」 腹の...
昨日、あのあと何を聞いてもはぐらかされてしまい、よくわからないままだった。死ぬことと殺されることは、どう違うのか。なぜ自分なんかを救世主と呼んだのか。救世主? ――ありえない。 コンクリートの天井のシミを見つめながら...
日当たりのいい窓際に置かれたソファで眠る彼女は、日向ぼっこをする黒猫のようだ。 自分も怠惰な生活をしていると思うが、睡眠に関しては彼女のほうが貪欲かもしれない。――そろそろ起きるころだろうか。 コーヒーを淹れている...
昨日も結局、どんなふうに殺してほしいとか、予算はいくらでとか、一方的に挙げられる要望を聞いているだけになってしまった。 相手にせず追い出してしまえばいいのに。それとも、本人が望んでいるのだからさっさと殺してしまえばい...
あまり眠れなかった。 ベッドに横になったまま、昨日のことを思い出す。 仕事中も気になって集中できなかった。だからといってヘマはしなかったが、帰るのが予定より遅くなってしまった。 帰ったときには彼女はすでに眠ってし...
真っ黒なロングヘア、真っ黒な瞳の彼女は、気ままな黒猫のように勝手に棲みついた。 昼過ぎに朝食をとりながら、彼女の視線に気づかないふりをする。 「カロンさん。今日はお仕事ですか?」 とうとう話しかけてきた。 名乗っ...
「私を殺してくれますか」 その日、迷いこんだ黒猫のように、彼女はふらりと現れた。