ハーメルンの神様 #20 蓬莱は常世の南、ニライカナイの東
彼の家があった少し開けた場所から、木々の間が狭まって道らしくなっているところを通り、入り江とは反対方向、島の中心部に向かって進む。 名前といえば、と思い出したように安東が彼に話しかける。 「あの、さっきの美少年は……...
彼の家があった少し開けた場所から、木々の間が狭まって道らしくなっているところを通り、入り江とは反対方向、島の中心部に向かって進む。 名前といえば、と思い出したように安東が彼に話しかける。 「あの、さっきの美少年は……...
「部屋が余っているので、夜はこの家に泊まってください。……あぁ、申し遅れました、私のことはミチナガと呼んでくださいね。一先ず、その機械に強い子のところに行ってみましょう。道すがら島をご案内します」 家を出て、彼の後を少...
「戻っていて構わないよ」 柔らかく響く穏やかなバリトン――少年にかけられた、その声すら美しかった。 宝石のような少年の瞳は美しい人を映し、視線だけで返答すると静かに出て行った。 テーブルに着くよう促され、おずおずと...
窓から射し込む光が、扉から出てきた人物を照らす。 ふと、苦しくなって、息をするのを忘れていたことに気付く。 目の前に現れたその人は、この世のものとは思えないほど綺麗な、西洋画に描かれた天使よりも崇高な――――そう、...
道案内してくれるらしい少年に続いて、森の中の緩やかな坂を歩く。太陽の光が木々に遮られ、少し薄暗く、ひんやりとしている。 甘い匂いは海辺よりも強くなっているようだ。 暫く歩き、森を抜けた。 青い空が広がり、暖かい陽...
「……!」 声がした方に目を向けると、一人の少年が立っていた――高校生くらいだろうか。 深いアメジストの目、柔らかな白銀の髪。 「……どうやってこの島に入ってきたの?」 日本人離れした容姿の少年が発した、けれど明ら...
霧の中を進む。 神津島で耳にした情報通り、霧がよく発生するというのは本当らしい。 「これ、方角合ってるんですかね――――あ、」 視界が開けると、少し先に満島が現れた。 島自体が一つの森になっているかのように、青々...
「いやぁ、まずいですよ……これはまずいです」 海風を浴びながら、思い詰めた顔の安東が呟く。 太平洋を走る小型ボート。――目的地は満島だ。 島で捜査をしたくても、個人所有である満島は簡単には立ち入れない。島の所有者と...
「ホルマリン……ってあの、前に言っていた――」 「その通りです。安直に考えれば、死後ホルマリンに浸した、となりそうですが……」 ホルマリンに全身を浸されたところを想像したのか、安東は何とも言えない表情になっている。 「...
少しの沈黙の後、伊崎は説明を続けた。 「血中や臓器から、微量ですがアルコールが検出されました。これは当初の検査で判明していましたが、死因に繋がるような数値ではありませんでした。飲酒の形跡もなく、エタノールは死後産生され...