D-6 鷹の目の優男から聞いた場所を訪れる。白いコンクリートの廃屋。 建物の半分ほど階段を上り、不用心にも鍵のかかっていない扉を開けた。外観とは裏腹に、部屋の中には生活しているらしい痕跡がある。 ――首に、硬く冷たいものが押し当てられた。 抵抗する意思がないことを示すと、振り返ることを許された。 大柄な体躯を黒ずくめの服で覆い、艶のない黒の癖毛を持つ彼は、野生の狼のようだ。あの日見た、黒い影。 「――私を殺してくれますか」 前頁 目次 次頁