#8 昔話の結末

「それで、その後どうなったんですか?」

 安東が前のめりになっている。

「……ひと月ほど経って、怪我もすっかり治った頃、イズナ様に言われたんだ――『元いた場所、いるべき場所に帰りなさい』とね。『ここに長くいてはいけない』とも言われた。そして、『もう二度とこの島を訪れてはいけない』と。……神津島での生活に不満があったわけじゃあない。でも、満島で過ごした時間が、今でも忘れられないくらい幸せだったんだよ。それでも、いつも穏やかだったイズナ様の珍しく強い口調に、従うしかなかった。お顔は悲しげだったもんだから。……それで、小さな舟を用意してもらって、食べる物も持たせてくださってね。――よく晴れた、海の凪いだ日に、島を出たんだ」

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