周囲の島よりはるかに小さく、離れた位置に一つだけポツンと存在する絶海の孤島、満島。
個人所有の島らしく、定期船等はない。
「三宅島も御蔵島も、まさか満島の存在自体知らない人のほうが多数派だなんて……」
神津島へ向かう船上で、安東は最近癖になった溜め息を吐く。
「無人島だと思っていた、とか……まあ、不法侵入してまで行こうとする大人はいないし、子供だけじゃ行けないだろうしな」
「今度は収穫があると良いんですけど……」
神津島に到着し、早速聞き込みを始める。
やはり島の存在を知っている人は少なく、知っていたとしても、人の土地らしい、島に向かう船は見たことがない等の証言ばかりであった。
また、満島周辺はよく霧が発生するらしく、船で近くを通ることもないそうだ。
「――満島の話を聞いているっていうのは、君たちのことかね?」
聞き込みを始めて数時間、一人の島民が声をかけてきた。八十代くらいの男性で、いかにも好々爺という感じだ。
すぐ近くにあるという自宅に招かれ、縁側でお茶を頂く。
「……この話をするとね、昔だと夢を見ていたんだ、今だととうとうボケたか、なんて言われるもんだからね、あんまりしないようにしていたんだよ。でも、これも何かのご縁かもしれないから。――――あの島、満島はね、神様の島なんだ」