舟が発見されたのは四月二十日早朝。前日の夜までは、辺りには何もなかったそうだ。
海岸付近にあるガソリンスタンドの防犯カメラに、舟らしきものが映り込んでいるのが辛うじて確認できた。映像では確かに、舟は沖の方から流れ着いていた。
動力を持たない小さな舟は、風と潮流によって動くしかない。
「つまり、四月二十日から風向き、風速、潮流を逆算していけば、舟がどうやって海岸へ辿り着いたのか――どこから来たのかわかるはず……」
署に戻り、遅い夕食を摂りながら今日得た情報をまとめる。
「なるほど」
頷きつつ頭を抱える安東を横目に、モニターに映る地図をなぞる。
「――解析はもうしてもらってある。伊豆半島の南、緯度は三宅島の少し南にある御蔵島と同じくらいで……みつ、しま」