「部屋が余っているので、夜はこの家に泊まってください。……あぁ、申し遅れました、私のことはミチナガと呼んでくださいね。一先ず、その機械に強い子のところに行ってみましょう。道すがら島をご案内します」
家を出て、彼の後を少し距離を取って歩く。
「同じ人間とは思えませんね……! 中性的とはまた違って……あんなに綺麗な人、初めて見ました! 見た目が良いと、性格も良くなるんですかねぇ」
前を行く彼がゆったりと優雅に歩いているのは、単に所作が落ち着いているだけなのではなく、その長い脚から生み出される歩幅によるところも大きいようだ。
身長は一八〇センチメートル後半で、体格も良い。中性的というよりむしろ男性的というほうが表現として正しいはずだが、造形美のせいか、纏う雰囲気によるものなのか、敢えて外見上の性別で彼を形容するならば、優美な彫刻のような男性というのが最もそれらしいのではないだろうか。
興奮しながらも小声で話しかけてくる安東に、さらに小声で返す。
「……気を抜くなよ、あの男、恐らくこの島の所有者だ。――鵬園道長、三十六歳で何か事業をやっている資産家らしいが、詳しいことは調べても出てこなかった」
「ほうえん……本名を隠すつもりはないみたいですけど、普通は苗字のほうを名乗りますよね? 何か意図があるんでしょうか?」
「さぁ……どうかな」