道案内してくれるらしい少年に続いて、森の中の緩やかな坂を歩く。太陽の光が木々に遮られ、少し薄暗く、ひんやりとしている。
甘い匂いは海辺よりも強くなっているようだ。
暫く歩き、森を抜けた。
青い空が広がり、暖かい陽射しが降り注ぐ。
色とりどりの花が咲いていて、甘い匂いはさらに濃度を増した。――まるで植物園の温室のようだ。
少年が歩いていく先には、お伽話に出てきそうな石造りの家が見える。
家の中に入り、さらに進む少年の様子を窺う。
一室の扉の前で立ち止まり、ノックした。
「ミチナガ。ボートが故障して流れ着いたっていう人たちを連れてきた」
少年が告げると、すぐに足音が聞こえて、扉が開いた。