少しの沈黙の後、伊崎は説明を続けた。
「血中や臓器から、微量ですがアルコールが検出されました。これは当初の検査で判明していましたが、死因に繋がるような数値ではありませんでした。飲酒の形跡もなく、エタノールは死後産生されますから。ただ、死後産生されるエタノールというのは、腐敗によって産生されるものなんです。……ご覧の通り、腐敗はまだ始まってすらいません。それで詳しく調べてみたところ、体内で生成される以上のメタノール、そしてホルムアルデヒドが検出されました。――さらに不可解なのは、皮膚細胞から一番多く検出されたという点です」
「えっと、つまりどういう……?」
理解できていないのは自分だけなのか、という表情で安東がこちらを見てくる。
「――――メタノールはアルコールの一種で、ホルムアルデヒドの原料でもある。ホルムアルデヒドの水溶液がホルマリン」