ハーメルンの神様 #7 昔話
「昔、十九の頃だから……七十年近く前だ。船で海に出た時に、嵐に遭ってね。海に投げ出されたんだ。目が覚めたら、上等な寝台に横になっていてね。体は重いし、足を怪我して動けなかった。部屋の様子を窺っていると、戸が開いて、誰かが...
「昔、十九の頃だから……七十年近く前だ。船で海に出た時に、嵐に遭ってね。海に投げ出されたんだ。目が覚めたら、上等な寝台に横になっていてね。体は重いし、足を怪我して動けなかった。部屋の様子を窺っていると、戸が開いて、誰かが...
周囲の島よりはるかに小さく、離れた位置に一つだけポツンと存在する絶海の孤島、満島。 個人所有の島らしく、定期船等はない。 「三宅島も御蔵島も、まさか満島の存在自体知らない人のほうが多数派だなんて……」 神津島へ向か...
舟が発見されたのは四月二十日早朝。前日の夜までは、辺りには何もなかったそうだ。 海岸付近にあるガソリンスタンドの防犯カメラに、舟らしきものが映り込んでいるのが辛うじて確認できた。映像では確かに、舟は沖の方から流れ着い...
「……そうですね、ホルマリンによって死後変化は起きなくなります。ただ、これは死後使用すればその時点で死後変化が停止するということで、生体に使用すれば多臓器不全に繋がるほどのひどい炎症を起こすはずです。ご遺体は現時点でも、...
「外傷がないということで、低体温症による凍死も考えたのですが――」 解剖結果を聞きに来たところ、慎重そうに話を切り出された。 「もう春ですよ!?」 安東が驚く。 「大して気温が低くなくても、二次的に起こる可能性がある...
所持品が何もなかったにも関わらず、女性の身元はすぐに判明した。 清水早雨――二十六歳、会社員であった。 身元がすぐに判明した理由、それは捜索願が出されていたためである。 職場では仕事も人間関係も問題なく、むしろ真...
きらきら光る青が白く泡立って、象牙色の砂浜に引き寄せられていく。緑は生い繁り、色とりどりの花が太陽を見つめている。 一葉の小舟が、島から旅立ったようだ。 「――――いつか休暇を貰えたら……あんなところでゆっくりしたい...