ハーメルンの神様 #17 神様
窓から射し込む光が、扉から出てきた人物を照らす。 ふと、苦しくなって、息をするのを忘れていたことに気付く。 目の前に現れたその人は、この世のものとは思えないほど綺麗な、西洋画に描かれた天使よりも崇高な――――そう、...
窓から射し込む光が、扉から出てきた人物を照らす。 ふと、苦しくなって、息をするのを忘れていたことに気付く。 目の前に現れたその人は、この世のものとは思えないほど綺麗な、西洋画に描かれた天使よりも崇高な――――そう、...
道案内してくれるらしい少年に続いて、森の中の緩やかな坂を歩く。太陽の光が木々に遮られ、少し薄暗く、ひんやりとしている。 甘い匂いは海辺よりも強くなっているようだ。 暫く歩き、森を抜けた。 青い空が広がり、暖かい陽...
「……!」 声がした方に目を向けると、一人の少年が立っていた――高校生くらいだろうか。 深いアメジストの目、柔らかな白銀の髪。 「……どうやってこの島に入ってきたの?」 日本人離れした容姿の少年が発した、けれど明ら...
霧の中を進む。 神津島で耳にした情報通り、霧がよく発生するというのは本当らしい。 「これ、方角合ってるんですかね――――あ、」 視界が開けると、少し先に満島が現れた。 島自体が一つの森になっているかのように、青々...
「いやぁ、まずいですよ……これはまずいです」 海風を浴びながら、思い詰めた顔の安東が呟く。 太平洋を走る小型ボート。――目的地は満島だ。 島で捜査をしたくても、個人所有である満島は簡単には立ち入れない。島の所有者と...
「ホルマリン……ってあの、前に言っていた――」 「その通りです。安直に考えれば、死後ホルマリンに浸した、となりそうですが……」 ホルマリンに全身を浸されたところを想像したのか、安東は何とも言えない表情になっている。 「...
少しの沈黙の後、伊崎は説明を続けた。 「血中や臓器から、微量ですがアルコールが検出されました。これは当初の検査で判明していましたが、死因に繋がるような数値ではありませんでした。飲酒の形跡もなく、エタノールは死後産生され...
「丁度こちらに戻っていたところです。すぐ向かいます」 神津島から戻った翌日、伊崎から連絡があった。 「……あのぉ、何か特別な処置をされたんですよね?」 通常とは異なる方法で遺体安置をしていると説明され、安東が遠慮がち...
「満島に行ってはいけないよ。あそこは、人間が荒らしてはいけないところだ。もちろん、君たちが荒らそうとしているんじゃないっていうのは、わかっている。でもね、無闇に踏み入って良い場所じゃあない――穏やかで美しい、まさに地上の...
「それで、その後どうなったんですか?」 安東が前のめりになっている。 「……ひと月ほど経って、怪我もすっかり治った頃、イズナ様に言われたんだ――『元いた場所、いるべき場所に帰りなさい』とね。『ここに長くいてはいけない』...