《アンドロニカス》D-13
ある日、一人の少女が屋敷の扉をノックした。 「――なんだ? 学生さん?」 黒いセーラー服を着た彼女は、人形のように無表情だった。 「……人を探しているんです」 ――門番はどうした? どうやって敷地内に入ってきた? ...
ある日、一人の少女が屋敷の扉をノックした。 「――なんだ? 学生さん?」 黒いセーラー服を着た彼女は、人形のように無表情だった。 「……人を探しているんです」 ――門番はどうした? どうやって敷地内に入ってきた? ...
「――本当に……今日、やるのか?」 「そうですよ。だって、あなたはカロンでしょう? 名前は、ですけど」 「死神じゃないか……カロンは、コードネームだ。――――名前は……ダート」 「――ダート……そう、ダートさん」 腹の...
昨日、あのあと何を聞いてもはぐらかされてしまい、よくわからないままだった。死ぬことと殺されることは、どう違うのか。なぜ自分なんかを救世主と呼んだのか。救世主? ――ありえない。 コンクリートの天井のシミを見つめながら...
日当たりのいい窓際に置かれたソファで眠る彼女は、日向ぼっこをする黒猫のようだ。 自分も怠惰な生活をしていると思うが、睡眠に関しては彼女のほうが貪欲かもしれない。――そろそろ起きるころだろうか。 コーヒーを淹れている...
昨日も結局、どんなふうに殺してほしいとか、予算はいくらでとか、一方的に挙げられる要望を聞いているだけになってしまった。 相手にせず追い出してしまえばいいのに。それとも、本人が望んでいるのだからさっさと殺してしまえばい...
あまり眠れなかった。 ベッドに横になったまま、昨日のことを思い出す。 仕事中も気になって集中できなかった。だからといってヘマはしなかったが、帰るのが予定より遅くなってしまった。 帰ったときには彼女はすでに眠ってし...
真っ黒なロングヘア、真っ黒な瞳の彼女は、気ままな黒猫のように勝手に棲みついた。 昼過ぎに朝食をとりながら、彼女の視線に気づかないふりをする。 「カロンさん。今日はお仕事ですか?」 とうとう話しかけてきた。 名乗っ...
「私を殺してくれますか」 その日、迷いこんだ黒猫のように、彼女はふらりと現れた。
「部屋が余っているので、夜はこの家に泊まってください。……あぁ、申し遅れました、私のことはミチナガと呼んでくださいね。一先ず、その機械に強い子のところに行ってみましょう。道すがら島をご案内します」 家を出て、彼の後を少...
「戻っていて構わないよ」 柔らかく響く穏やかなバリトン――少年にかけられた、その声すら美しかった。 宝石のような少年の瞳は美しい人を映し、視線だけで返答すると静かに出て行った。 テーブルに着くよう促され、おずおずと...