あの日から、たった一つの願いのために生きてきた。
――ようやく悪魔の巣から抜け出すことができる。
事件のあと、親戚の家に引き取られることになった。
最初のうちはよかった――ほんとうに。世間体と遺産欲しさに後見人になったことは、子供の目にも明らかだったけれど。それでも、普通の暮らしを送ることができた。
でも、父と母の疑惑が報道されるたびに、冷たくなる視線、厳しくなる態度、激しくなる口調。
『今までいい思いをしてきたんだ、汚い金で』
『甘やかされて育ったから世間の厳しさを知らないのよ』
『自分たちだけで金を独占して! 慈善家だなんて、寄付も結局自分たちのためじゃないか。遺産だってほとんど寄付しやがって』
――最悪だったのは、いつだったかその家の息子が部屋に忍び込んできたときだ。なぜか私のせいということになって、ヒステリックな叫び声が明け方まで続いた。
『中学卒業までは家に置いてやる』
恩着せがましくそう言われ、七年耐えた。
お金はだいぶ使われてしまったものの、高校の学費を払っても生活費をある程度賄えるくらいは残っていた。少しアルバイトすれば十分暮らしていける。
やっと、息を吐き出すことができた。